新しい期が始まって1カ月。皆さんのクラブでは、既に年間のビジョンや目標を立てていますでしょうか。今回のシリーズは、「8月こそ点検したい、1年間のクラブの方向性」と題して、「クラブビジョン」「具体的目標の設定」「年間計画」「未チャータークラブのビジョン・目標設定」の4つを紹介していきます。今回は「ビジョン」(会長向け)についてです。
クラブ会長のマニュアルを見ると、他の役員に比べてそれほど具体的な内容は書いてありません。それもそのはず、会長は実務以上に注力しなくてはいけないことがあるからです。それは、責任者としてビジョンを設定し、目標を常にモニターし、クラブを一定の方向性に導くことです。
期初にクラブとしてのビジョン、あるいは「どのようなクラブでありたいか」を会長が発表されたクラブが多いのではないでしょうか。さて、1カ月経ち、それは例会運営にどう反映され、またクラブは実際にどういった方向性に向かおうとしているでしょうか。
以下に、ビジョンに関するチェックポイントを挙げてみました。もし皆さんのクラブの例会を見て、「あれ、こんなはずではないのでは?」「今一つクラブの方向性に自信が持てない」と迷われているようでしたら、以下の点を検証してみてはいかがでしょうか。
1. メンバーやクラブ全体のニーズや現状を踏まえたものであり、会長や役員個人がやりたいことに偏っていない。
たとえば、会員はイベント続きで疲れ気味の時に、「今年は去年以上にイベントを増やして、盛り上げていきましょう」といったビジョンを設定したら、会員のお疲れ感はさらに増していく可能性があります。あるいは、会員も順調に増えて、クラブ内には他クラブを訪れるなど積極的な会員も多く盛り上がっているところで、「面倒なことは避けていきましょう」的なビジョンでは、会員は物足りなさを覚え、他のクラブや他の活動のほうが魅力的と感じてしまうかもしれません。
「自分がイベントをやりたいから、今年はイベントをたくさんやれば、きっと楽しいクラブになるだろう」「役員が疲れ気味だから、新会員も含めてみんなそうだろう」と思い込むのは早計です。今からでも遅くはありません。この1ヶ月間クラブ全体を見渡して、もしクラブの今の空気や会員のニーズに合っていないビジョンがあれば、それに合わせて変更することは決して悪いことではありません。
2.ただ会員に合わせるだけではなく、1年後のクラブが今よりもより成長している姿を想像できるビジョンにする。
「みんな仕事や家庭との両立で大変だから、今年はぼちぼち楽にやっていこう」「とりあえず現状維持できればいいのでは」
上記にあるとおり、お疲れ気味の会員が多い中で行け行けどんどんのビジョンを立てても、会員のさらなる疲弊や反発を招く可能性があります。しかしながら、トーストマスターズは教育機関であり、仲良しクラブではありません。1年後の会員やクラブ全体に「成長」、つまり今よりも会員がスキルアップしているなど、「クラブ全体としてのレベル(質・量)が何らかの形で向上している」ことが描けないのであれば、それは教育団体としてのビジョンに見直しの余地があるということではないでしょうか。
たとえば、会員が疲れ気味であれば、「基本に忠実に、即興スピーチ・準備スピーチ・論評の3本柱で、それぞれの会員に合ったスキルアップの場を提供する」といった内容のビジョンではいかがでしょうか。似たような方向性であっても、「会員の負担を少なく、あまり特別な企画はせずに、会員がそれぞれできる範囲でスキルアップできるようにする」と言うよりも、ずっと前向きではないでしょうか。
「このクラブに入っているメリットは何?(What's in it for me?)」という問いに答えられるようなビジョンを目指したいものです。
3.「イメージできるビジョン」にする。具体的で、定量化できる目標を導き出せるようなビジョンを立てる。
仮に、「基本に忠実に、トーストマスターズの基礎プログラムを重視し、それぞれの会員に合ったスキルアップの場を提供する」というビジョンがあったとしましょう。
1年後、このクラブはどうなっているかを想像してみましょう。それも、できるだけ具体的にです。以下、イメージの例を挙げます。
「例会平均出席人数は今よりも5人ほど多い25人くらい。今よりも会員が7〜8人純増していて、雰囲気も賑やか、それだけ学びも多くなっている。今は1回に1人か2人しかゲストが参加していないが、1年後には平均5人は訪れるようになっている。スピーチに特に熱心な、昨年末入会の会員4人(できれば名前も具体的に)が今期中にCCを達成。CLマニュアルも、毎回のマニュアル交換タイムが功を奏して、そろそろ2人くらいはCL達成者が誕生するだろう。今は例会の4本のスピーチが全て基本マニュアルのことが多いが、今後はそのうち1本は上級マニュアルで、スピーチ本数も可能な限り5本にしたい。今年前半に入会した5人の会員のうち2人が来年のインハウスコンテスト(日・英)で、それぞれ委員長を務め、次の役員候補にもなっている。論評ワークショップを期の前半に開催し、会員が論評について深く学べる機会を設ける。そのこともあり、1年後のクラブ全体の論評スキルの高さは、他クラブのゲストからも評判になっている。」
そう考えると、具体的な教育・会員目標も見えてきます。(目標の設定は、次回掲載します)
これが、「楽しいクラブ」「ためになるクラブ」というビジョンならどうでしょうか。具体的なイメージは、あまり湧きにくいのではないでしょうか。なぜなら、言葉が抽象的すぎるからです。ある人によっては、楽しいクラブとは、「楽しいスピーチが常に聞けるクラブ」かもしれませんし、別の人にとっては、「会員間の交流の機会が多いクラブ」かもしれません。
その場合は、「○○クラブが目指すべき、楽しいクラブとは?」「ためになるクラブとは?」と考えて、より具体的な言葉で表した方が、会員にメッセージとして伝わります。
「クラブ設立のフレームワーク」でも述べましたが、「イメージを抱く」ことは、ビジョンを設定する立場であれば特に重要です。それを他の役員や会員にも伝わるような具体的な言葉で表すことで、クラブにより一体感が生まれます。
4. キャッチフレーズを作る。
上記を現実にするために、キャッチフレーズやキーワードを作ると効果的と言われます。たとえば、
"EnVision Your Future" (Visionaries TMC、2010-11)
"From Tradition to Innovation" (日本橋センチュリーTMC、2009-10)
「フロンティア・スピリット」 (横浜フロンティアTMC、2008-09)
「みんなで作ろう溝の口クラブ」 (溝の口TMC、2007-08)
などです。
但し私自身はあまりキャッチコピーを作るのが得意ではなく、上記も実はほとんどが、ビジョンを聞いた他の役員が「つまり、こういうことですね」と発言した言葉がキャッチフレーズになった、という経緯ですので、具体的な作り方は割愛します。逆に言えば、会長自ら考えたものでなくても、クラブのだれかが付けてくれることがあれば、それをクラブ全体で掲げてもよいのではないかと思っています。
キャッチフレーズの効果は、会員にとっても覚えやすくメッセージが伝わりやすいこと、聞くだけでクラブの方向性が想像しやすいことです。これがなかったからと言ってクラブの命運に関わるようなものではありませんが、こういったことを考えるのが得意な方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
次は、クラブ会長・教育担当向けに、DCPプログラムをはじめとした、ビジョンに忠実な目標設定の具体的やり方についてお伝えします。


